2013年8月1日木曜日

ISAS/JAXAの特別公開2013を見に行ったり(その2)

◆ISAS/JAXAの特別公開を見に行ったり(その2)
 そんなわけで、まだまだ続くJAXA特別公開のあれこれ。

 2013年度のクイックリンク的な(その1その2(このページ)その3その4

◆宇宙VLBIの素敵
 んなわけで、いろいろな展示がある中で、気になったひとつが電波天文学のコーナー。
 ブツがあって非常に派手な衛星の展示から比べると、パネル一枚で収まってしまっているヤケに小さい展示なのだけど、個人的には気になる部分。

 電波望遠鏡ってのは要するに宇宙からやってくる電波を全部ゴッツいパラボラで根こそぎ受け止めて調べてしまおうという代物(もちろん宇宙空間からやってくる電波には、観測に適したものとそうでないものがあり、観測に適した波長に合わせて調整してあるものなのだけど)、観測したい物と地球の間に分厚いガスの層があっても、電波は多くの場合これを透過してしまうので(あとで説明するラジオ波による電気伝送もこの透過性を利用してたり)、ガス雲の向こう側が見える頼もしい存在だったり。

 例えば、銀河系の中心にあると言われている射手座A*(エースター)は、その手前に分厚い星間ガス雲が存在するため、光学的には観測することが出来ないのだけど、電場望遠鏡ならガッツリ観測できる。おまけに、光学望遠鏡では難しい(出来ないことはないけどとても難しい)超長基線電波干渉法という手が使える。
 どういうことかというと、詳しい理屈は抜きにして、二つ以上の電波天文台があった場合、それぞれの天文台が同じタイミングで同じ天体を観測すれば、その二つの天文台の距離に均しい口径のパラボラアンテナで観測したのと同じ性能が得られるというミラクルな方法。

 複数の電波天文台の間の距離があるだけ性能は上がるから、今は地球のいろいろな所にある電波天文台が、それぞれ連携して地球に近いサイズの電波望遠鏡を使って宇宙を観測しているとも言えたり。
だいたいこんな

 でも、もっといいのが電波望遠鏡を宇宙に持って行ってしまうこと。
 そうすれば、地球サイズどころか、宇宙サイズの電波望遠鏡を持てることになり、今まで到底出来なかったような詳しい観測が可能になるわけで。
事実上いくらでも口径を巨大にできるのだ
で、実際これはスペースVLBIと呼ばれ、「はるか」という衛星で実現されていたり(運用は既に終了)。地味だけど、とてもすごい成果を出していた衛星だったりするのです。しかも計画名がVSOPという酒好きにはたまらない名前。
 特にブラックホールだのの観測では、当時他ではできないトンデモな解像度での観測や成果を出していて、個人的にはもうちょっとこのあたりに光が当たってほしいなあと。良い成果だって出してるわけだし。
 ただ、X線天文衛星とか赤外線とかの光学天文衛星に比べると成果が分かりにくい(電波の波長の長さの関係で解像度が低いことや、そこから得られる画像が誰が見ても分かりやすい画像ではなく、キャッチーではない)せいか、どこの国でも後回しっぽいのが残念。
 
 このあたり、他の展示コーナーもあって子供が沢山いたり展示コーナーで写真撮り忘れたりして、今ひとつ無念感漂うのですが、光学望遠鏡だけでなく、こっちの方も是非とも色々発展してほしいものです。
 ところで電波天文学が始まって、現在に至るまでの全期間に、電波天文台が宇宙から得た全ての電波のエネルギーを全て集めた時、どれだけになるかというと

「鳥の羽一枚を1mの高さから落とした程度」

 だそうで……どんだけ傾聴してるんだ。

◆見ない光を集めて観る
 次に見たのが太陽観測衛星ひので
 テレビで公開されたことの多い動画ではあるけど、こんな感じ。

 もっと凄い映像とかもあったんだけど、人通りが割と多かったのであんまり落ち着いて撮れなかった。頼んだら動画もらえたのかなぁ……
 ところで、太陽観測衛星ってやっぱり望遠鏡なわけで、望遠鏡として機能するためには、光を集めなきゃならんのだけど、太陽から光集めた日には、焼けるとかじゃなくてそのまま蒸発してしまう勢い。
 そんなのどうやって観測するんじゃオラとか思ってたら、ちゃんと解説があったり。
 なんでも主鏡の反射率を5%くらいにして、あとは全部透過させたりして観測機器に光が集まらないようにしているらしい。でもその反射率5%の主鏡で観測機器に集められた太陽のエネルギーは、同じ面積に普通に太陽光が当たった場合の1500倍だとか……
 すげえ……

◆小さくても自由自在
 次に向かったのがミニ衛星のコーナー。
 こことか、こことか。
 厳密な定義を知らなかったけど、100kg未満の衛星のことを「超小型衛星」と呼ぶのだとか。

 で、このミニ衛星。だいたい色々な大型衛星のペイロードの隙間に詰め込まれるような形(ピギーバック方式)で打ち上げられたり、宇宙ステーションからバネでふっ飛ばされたりして打ち上げられているのだけど、今までずっとこうした超小型衛星は、吹っ飛んだら吹っ飛びっぱなしで、特に姿勢制御とか出来ないものだと思ってた。

 ところが一緒に行った友人が「詳しく聞いたら違った、磁気トルカというものを使っている」というのを聞いて、自分でも是非とも確かめに行きたくなったので二日目にじわっと見に行ってみた。
 各種観測衛星で盛況な部屋とはちょっと違って部屋も小さめ、人も少なめな感じでしっかり見れました磁気トルカ。
 
磁気トルカってシールがちゃんと貼ってある
衛星自体も小さいけど、磁気トルカそのものはクレジットカードを一回り大きくした感じ。本当に大した大きさじゃない。

 で、この磁気トルカ。一体何なのかというと、結局電磁石。これに電流を流すことで、磁場をつくり、「地球磁場と反発したり引きあったりして姿勢制御する」システムだったのだ。
だいたいこんな
上の写真の衛星には上下?二箇所に磁気トルカが装着されていて、この二つの磁気トルカによって、姿勢を制御したり、回転したり、軌道を変更したりする事が可能で、超小型衛星は予想しているよりも遥かに自由度が高い運用が可能だというのが分かって驚いた次第。 

 ちなみに、この磁気を使った方法、後の研究でも何回も出てきて、磁気が何かの流行りなんじゃ無いかと思うほどだったり(磁気とプラズマを用いたものが多かった)。

 で、磁気トルカは小さくて機械的部分がないので滅多なことでは故障しないという利点があるのだけど、地磁気を利用している関係上、地球から離れれば離れるほど力が得られにくくなるのと(離れたら離れたで、後で説明するような別の利用方法があるのだけど)、手の片手で持てる程度のナノサットより大きなものになると得られる電力と、マニューバ(要するに姿勢制御とか)に必要な力とのバランスが悪くなってくる。
 そこで出てくるのが、下の写真のCMG。
 何者かというと、要するにフライホイール。はやぶさで真っ先にぶっ壊れたアレである。

フライホイールの回転軸と別の回転軸がある
これは、だいたい衣装ケース(50~100cm程度?)サイズの人工衛星に搭載されるもので、注意して持ってみると微かな振動は感じるものの重さとしては大したことはない。
 ところがこれを左右に動かそうとすると、とたんにズッシリとした重さを感じる。
 中のフライホイールの回転のお陰で、ジャイロ効果が生まれているのだ。

実際デカい(縦横奥行き80cmくらい?)
画像サイズの衛星(衣装ケースというか80cmくらいの立方体)では、こうしたCMGが通常それぞれ軸をズラした状態で4個搭載されているのだとか。
 これはひとつはひとつ壊れても問題なく運用できるようにする予備のため、もうひとつはジャイロ特有のジンバルロック現象を回避するためらしい。

 残りの二つは見たとおり非常に小さいアマチュア無線衛星(の同型試作機?)。たよりなさげに見えるけど、CUTE-Ⅰ(JQ1YCYの方、こちらは何故か名称が全部大文字)は、2003年6月の打ち上げ、Cute-1.7+APDⅡ(JQ1YTCの方)は2008年4月の打ち上げで、いずれも現在でも軌道上で動作運用されているそうです
 すげえ。


世界最初のCubesatだとか
超小型衛星の部屋を離れて、次はハイブリッドロケットの部屋とかを覗いて「実際に使われている燃料がパラフィンかよ?!」とか驚いたりしつつ、詳しく見たかったけど子供が多くてそちらのほうがやっぱり聞きたいことが多かったみたいなので、思ったほど時間取れなかったー
 あと、物理演算演算の省略方法とか、面白そうだったんだので詳しく説明してもらったんだけど、カッチリ理解しているとは言いがたいので。

◆のんびりレース(中の人は焦る)
 研究・管理棟から特殊実験棟に移る途中で公開実験をやってるところ(総合研究棟の前)とかあったのだけど、暑かったのと脚に来てたのでちょっと見るの省略しつつ、中庭で開催されていた自立型自走探査体(火星のロボット探査機みたいなの)のレース的なものが開催されていたので、ちょっと見る。
レースには参加してなかった
色々なタイプの自立探査ロボがあったけど、基本的には移動のみ。あと太陽電池から得られる動力のみで動くのがルールだったみたいな。でも、(おそらく太陽電池で充電した)バッテリは使ってるとは言っていた。


そろりそろりと移動する

脚の車輪は想定している運用によって特徴が出てる
  これは太陽電池を積んでないタイプみたいな。それとも側面が太陽電池なんじゃろか?

なんか調整しているらしい。時々焦っている人も

ゴールまで行ったのが自分で戻ってくる


(石ころを)見てるだけ


車輪が螺旋状の針金?になっているタイプ
主制御は本体内に収められていて、命令を与えたり、映像を受け取るのはタブレットで行なっていた。
 コースを自立判断して決めてゴールまで向かうレースらしいのだけど、自立判断に時間がかかることと、元々の運用が太陽電池パネルから得られる電力だけに依存していること(一番広いパネルを背負ったものでも、日本の真夏の晴天で50Wくらいしか発電できないらしい)とかもあって、とてもゆっくりしたレース。

 おかげで、見ている人のほうがあくびしてたり。そんな感じののんびりレースでした。

 というわけで(その3)に続く。

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