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「
その1」からの続きであります。
暑いー
★めんどくさい人のための斜め読み用リンク★
その1、
その2、
その3、
その4
●生物調査(アストロバイオロジー)
「宇宙に居るのは我々だけかい?」(なんかのSF)
「わしら何処から来たんだっけ?、わしらって何だっけ?、わしら何処に行くんだったっけ?」(ゴーギャンの絵画のタイトル)
にもある言葉がこうした調査の原動力。
今までJAXAで
地球外生命体とか調べてるところ(リンク先は英文ばっかりでサッパリ分からんので、
こっちも参照)があるとは知らなかった。
今回はじめて知った感じで。
ただ、アストロバイオロジーって言葉から分かる通り、地球の生命が地球外で行きていけるか(人間の手以外で地球外に出て行った生物がいるのかどうか)というのも一緒に調べているというか区別しないで研究しているみたいな。
例えば、宇宙生命でなくても地球でよく見られる細菌が、宇宙空間の環境に長期間耐える可能性があることは結構前から指摘されていて、火星探査機にもし地球由来の細菌が付いていたら、それが火星上で繁殖して、生物調査に影響をおよぼすのではないかと言われているし、実際、実験のために軌道上に送られた植物の種子が、地球に戻ってきても問題なく生育してたり(今回の特別公開でも、そうした実験で送られた大豆の子孫に当たるものが、きなこに加工されて「宇宙きなこの揚げパン」的な名前で売られていたり)。もちろん、実験で軌道に送られたこうした種子は、そのまんま大気圏を突破してきたわけでなくて、宇宙飛行士が回収したり、回収カプセルの中に収まって地上に戻ってきたのだけど。
じゃあ、人間が何かしなくても(人間以外の)生物は宇宙に出ていくものか?、という疑問に答えをだすべく、大気球や航空機を使って大気の中に散らばらる塵とかを調べてその中に生物が居るかどうか色々調査してたり。
今回の展示では、高度12~35km程度の上層大気圏に納豆菌の仲間が、高度0.8km~1.2kmにデイノコッカス属と呼ばれる最近の仲間が見つかっているらしい。
もちろん宇宙に生物を見つけるための研究も積極的に進めているのですが、そこはそれ、様々な研究項目の中ではかなり後回しにされる調査のようで、現状ではまずは地質調査が優先されて、地球外生物調査は注目度が高いにもかかわらず基本的に「おまけ」とされているのだとか。で、そこでヘコタレないのが研究者。様々な調査観測の中に自分がやりたいものと重複する部分があるかを探しだして、その調査を主導しているところに出向き、「そっちの調査に負担掛けないで(予算的にも時間的にも重量的にも)一緒にできるから」と説明して自分のやりたいものを仕込むかが勝負になっている模様。
面白いのが、こうした理由と必要性から、数多くの惑星探査機や地球軌道上にある人工衛星、地上や宇宙にある各種望遠鏡その他の様々なジャンルや方法の研究を、横断的、俯瞰的に取り込む事ができる点。
例えば、宇宙生物調査が主題であるのに、宇宙空間、これは高真空と極端な高温と低温、そして磁場や宇宙線の問題がある場所で、機械の潤滑や密閉をどう保つかの方法や、それに関わる材料を研究したり、あるいは、火星の土壌の中に微生物が含まれているかを調べるのに、DNAを蛍光発光させる物質を混ぜたいのだけど、その物質が溶けた水を観測機器の中で土に掛けた時、火星の低重力下でその水がどのような挙動を示すのか分からないので、それを研究したり、といった「それ直接生命調査と関係あるの?」と言いたくなるような、広いジャンルでの研究を行っているのだとか。
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DNAを染色して蛍光を発する水を掛ける |
他にも宇宙の起源から、生物が生きていける惑星系の形成、惑星や宇宙空間での有機物の合成、地球上の生物の研究やその進化などなど、本当に幅広い研究をしている。
こうした間接的な研究調査以外にも、たんぽぽ計画と呼ばれる直接的な調査計画があったり。
これは、国際宇宙ステーション(ISS)に地球由来の生物(種子だの細菌だの)を持って行って、地球軌道上の宇宙空間に暴露して、どのような影響があるのかを調べたり、宇宙空間に漂う塵やら何やらをエアロゲルで回収して、その中に地球外生命体、もしくはそれに由来する痕跡を探すもの。
宇宙を漂う塵で何か分かるのかというと、例えば土星の衛星エンケラドスは、その表面の分厚い氷の下に、液体の水の湖があることがほぼ確実で、時々それが吹き出したりしているのが観測されていたり。で、もしエンケラドスに細菌みたいな地球外生命が居たとすると、水が宇宙に吹き出した時にそれと一緒に凍りついて宇宙空間を漂っている可能性がある。直接、木星だの土星だのの衛星に行って観測調査するのが確実だけど、予算も時間も大変なことになる。でも、向こうが勝手に吹き出した水の中にそれがあれば、地球軌道上でその塵や氷の粒に見つけられるかもしれない。一回や二回で確実なデータが得られるかは微妙だけど、こうした実験を何回も繰り返すことで、地球から出てきた生物が見つかっても、宇宙からやってきた生物が見つかっても、人間の手を借りずに宇宙に旅だった生物がいるのだけは確認できるわけで。どっちが見つかっても「宇宙はやっぱり生き物でみっしり詰まっている」と言えるようになるのだとか。
抜ける手はどんどん抜いて、でもキッチリ結果を出すために研究者は日夜色々工夫しているのであった。興味は尽きない感じで。
●DARTS
JAXA/ISASの膨大な観測データを公開しているところなのだけど、こんなポスターが貼ってあった(中ではちゃんと様々なデータを閲覧できるような展示がありました。さっき出てきた月(天体)ディスプレイとかも)。
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コミポ大活躍? |
この画像を見た人は口をそろえて「くーろんずだ!」というので、何のことやらと検索してみた。
うn
くーろんずだ。
●第二会場
●電波望遠鏡
第二会場に入って初っ端の部屋に入ると、いきなり地味な展示。でも実は毎回楽しみにしている
電波望遠鏡のブース。
今回は子供向けに星図を作るコーナーとか設置されていて、子供がそれなりにみっしりだったのだけど、やっぱり色々聞くことが出来て面白かった次第。
さて、
昨年は
「電波望遠鏡はパラボラの大きさが観測性能を左右する、望遠鏡をひとつ宇宙に持っていけばそれだけの大きさのパラボラが確保できたのと同じ」と書いたのだけど、今年もその辺りの話が色々出てきたり。
面白かったのが、電波望遠鏡を大気球にぶら下げて上層大気圏にまで持って行って、そこで観測しようという計画。
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ヘラ絞り職人さんの手作り |
ちょっと考えると、大気球だと衛星ほど継続して観測できそうに無いのは分かるし、風船にぶら下げられた手紙の如く、どこに行くのか風次第。特別公開の現場では大気球でどれだけの継続観測ができるのか聞きそびれてしまったのだけど、後から調べると、だいたい100日間くらい観測することを目標としている感じ。大気球で観測機器を持ち上げられる高度には観測機器とかの重量もあって、制約があるけど(もっとも人工衛星でも重量制限には厳しい物があるけど)、それでもほぼ宇宙空間と同じ観測性能が確保できる。
衛星を打ち上げる場合の10%くらいの費用で、衛星の10%以上の寿命が確保できれば大体問題なしというのは、確かに理にかなってるし、人工衛星と違って、かなりの短期間で気球に載せられることを考えると、これは確かに大きなアドバンテージ。
聞いた話の中でも「自分で買ったマザーボードや調整した観測機器をほぼそのまま積み込める」とか人工衛星にはない大きな自由度があるみたいな。
それに細かい条件が少なくて、打ち上げまでの期間が短いので、割と最新の観測機器を載せられることも重要。ロケットで打ち上げる場合は、開発の遅れや打ち上げの延期とかのせいで、軌道に乗った頃には、観測機器が時代遅れになってしまって、地上からの観測と大して変わらない結果になってしまったとかもあるし。
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これくらいのサイズでも自重での変形を気にしないとダメなのかー |
そして上空で長時間観測を続ける必要がある電波望遠鏡とかにとっては、浮かべた大気球がどんなルートを通って、その軌跡をどう制御するかはかなり重要な問題。この軌跡制御には幾つかの方法があるのだそうだけど、調べた限りだと、高度によって異なる風を利用して、行ったり来たりする方法があるみたいな。
ジェット気流みたいな上空の定常風に乗って延々と回り続ける方法の他、ある高度まで浮き上がった気球がそこで一旦必要な分を残してある程度ガスを抜いて高度を安定させ、風に乗って観測を続け、予定された場所まで来た時にバラストを捨てて上昇。反対方向に吹く風に乗って戻って、最後に元の場所の近くで気球を切り離して降下という方法もある模様。
で、さっき書いたとおり前回は複数のパラボラがあって、その間の距離が稼げれば電波望遠鏡としての性能は上がるのだけど、実は他に「観測機器の性能」と「観測周波数(観測密度)」の2つの要素がある。
観測機器の性能は分かりやすいけど、観測周波数って何だろう?って思ってたら、そのまんま一秒間にどれだけ観測できるかという事だった。
詳しく聞いてみると、パラボラの口径や観測機器の性能(一度に観測できる情報量)が同じなら、なるべく数多く観測できたほうがいい。そこで観測周波数を上げて、多くのデータを得て、全体としての情報の精度を上げるらしい(この三要素は宇宙に飛ばす観測機でも同じだけど)。
今まで考えたこともなかった話なので、ちょっとビックリ。
そもそも電波望遠鏡の場合、観測機器から得られるデータの95%はノイズなのだとか。
例えばハッブル宇宙望遠鏡から得られる生の観測データも、飛び交う宇宙線やら太陽風やらその他色々の影響で一枚だけ見ると何だか良くわからないくらいにガビガビの画像。それを(同じ観測対象を)何十回も何百回も撮影して、データを積み重ねて行って、よく見る美しい映像にしていってる。
ノイズだらけで全然嬉しくないハッブル宇宙望遠鏡無修正写真。
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ノイズを取り去るためには数多くの観測が必要 |
電波望遠鏡も同じことで、本当の電波像を得るために、同じところを長い時間掛けてずっと観測し続けないとならない。けど、観測周波数が高ければ、同じ時間に得られるデータが増えて、結果を得るまでの時間を短くすることが出来る。
だから観測周波数は重要になるというわけ。
そして、今計画されている(もう進行してるのかな?)大気球に吊り下げられる電波望遠鏡の観測周波数は2Gbps。bpsはビット・パー・セカンドの略で、一秒間にどれだけのデータ(ビット、0か1かの数字)を送れるかの単位。2Gbpsだと一秒間にだいたい2億6千万バイト……だいたい256Mバイトのデータを得られる(計算間違いしてたらスマヌ)。
初めて聞く説明だし、数字だけだとどれくらいの性能か今ひとつわからないので、実際どういうものなのか聞いてみたら、かなり凄いらしい。
チリのアタカマ砂漠に設置されている大規模な電波干渉計ALMAだと、それぞれの電波望遠鏡をものすごく太い光ケーブルでつないであるので、16Gbpsの観測ができるけど、日本にある多くの天文台の観測周波数はやっと1Gbps。
地上にある何十メートルもある巨大なパラボラを気球で持ち上げることは出来ないけど、その分、観測機器の性能と観測周波数を上げて、地上の大型望遠鏡に劣らない観測をやってしまおう、という寸法。
ところが、せっかく大気球で大気の影響の少ない高度まで性能の高い電波望遠鏡を持ち上げても、気球からぶら下がってるだけで、何処に行ってるのかはGPSとかでわかるものの、素人考えでも望遠鏡がどっちを向くのかとか、安定しないんじゃないかって気がする。その辺聞いてみると、なんと気球で持ち上げる電波望遠鏡(観測機材)にも、人工衛星同様のスタートラッカー(星姿勢計、基準になる星を観測して今どういう姿勢なのかを調べる装置)、吊り下がっているだけの電波望遠鏡を正しい方向に向けたり、振動を抑えるためのリアクション・ホイール、気球とつながっている紐のねじれを調整するモーターなどが搭載されてて、軌道上の観測衛星と同等の姿勢制御能力があるのだとか。
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(費用が)安い、(打ち上げまで)速い、(機材への制約が少なくて)簡単 |
電波天文学というのは見た目すごい地味なジャンルだけど、話を聞くとやっぱ面白いー。こうした観測装置を駆使して、ブラックホールとかを観測する予定だそうだけど、どんな結果になるのか楽しみな次第。
あと、地上にある電波望遠鏡の話もちょっとだけ聞いてきたり。今のところ日本とオーストラリアが共同で観測しているらしいけど、これにイタリアだったかスペインだったかが参加してくれれば、ほぼ地球サイズのパラボラに相当するVLBIが可能になるとか。こっちの方もこれからどうなるか楽しみ。
あと写真に出ている大気球電波望遠鏡用のパラボラアンテナ、これはヘラ絞り職人さんの手になるもので、微妙な曲線を出せるのはまだ人間のほうが(費用対効果的なコストパフォーマンスもあって)優れているのだそうです。
●ASTRO-H(X線天文衛星)
今軌道上で観測を行っている
「すざく」(
こっちも参照)の後を引き継いで2015年に打ち上げられる予定の新型X線天文衛星。衛星本体の底からマジックハンドみたいなのがベロっと伸びているのがヤケに目立つ。
これはX線望遠鏡の焦点距離を稼ぐための工夫だそうで、マジックハンドの伸びた先に観測機の頭側から入ってきたX線を調べる観測装置が積んである。
さて、レントゲン写真とかで使われるX線。波長の短い光(電磁波)なんだけど、体を突き抜けて骨とかの状態がわかるほどの透過力がある。なら、なんで地上に望遠鏡置いて調べないんだ?って事になる。これには地球の大気とかが関係している。
X線は確かに高い透過力を持っているけど、その一方で大気圏を通過する途中で大気に吸収されてしまう。じゃあなんでちゃんと昼は明るく照らしだされているんだ?って事になるけど、細かい理由は置いておいて、大気には吸収しやすい波長としにくい波長がある。んでもって、ちょうど人間の目で見える光(可視光)が大気が一番吸収しにくい波長の光になっていてそれだけが地上によく届く(もし、大気が可視光を吸収しやすかったら、逆に人間の目は赤外線や紫外線がよく見えるように進化していたかも?)。紫外線とか、X線とかは大気がよく吸収してしまうので、地上に届かない。
そんなわけで、太陽とか星とか宇宙のいろいろな天体から届くX線を詳しく観測するには、観測機器を分厚い大気の外側に送る必要がある。電波望遠鏡のところでも書いたとおり、気球で観測機器を上げても良いのだけど、観測機器を宇宙に打ち上げることには利点と欠点があって、状況によって変わってくるんだけど、X線による観測は、今回は軌道上に打ち上げたほうが良いという判断があったのではないかと(実績やら予算やらその他様々な問題もあるけど)。
で、最初の
「ひさき」のところで触れたけど(
その1参照)、極端紫外線はレンズで屈折することができなくて、反射望遠鏡になってしまうことを書いたけど、X線ともなるともっと辛い。光学レンズで屈折することも、紫外線が反射できるような鏡で反射させることも出来ない。
そこで使われるのが、この筒みたいなの。中は少しづつ大きさの違う筒が、マトリョーシカ人形みたいに入れ子状にみっしり詰まっている。X線を観測機器に集めるためのレンズの働きをするのだけど、この中に入っている薄板一枚一枚がX線を反射する。形は違うけど仕組み的には反射望遠鏡なのかも。
このX線のためのレンズ、筒が幾重にも重なった構造も面白いのだけど、使われている材質も面白い。幾つかの種類があるのだけど、基本的には薄いアルミ板に何らかのメッキが施してある。今回説明してもらったものは、金メッキとカーボンコーティング+プラチナメッキの二種類。
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反射面側、裏は乱反射を防ぐためザラザラ |
金の方は、基本的には普通のメッキとしてコーティングしているのだけど、このメッキ層がムチャクチャ薄くて、原子10~12個くらいの厚さしか無い。これだけ薄いと均一にメッキするのもすごい大変で、ものすごい工夫があるのだとか。
もう一方は、アルミ板の上にカーボンをコーティングしてその上に更にプラチナをメッキするタイプ。
プラチナとカーボンという組み合わせは、難しい言葉で言えば電子親和力の問題だそうで、この組み合わせが上手く行っていないと、均一な表面になるはずのメッキ面にシワが寄って反射鏡としては使えなくなってしまうのだとか。
ここで疑問なのが、なんで金と二種類のメッキ方法が出てくるの?ということなのだけど、これはそれぞれの反射方法の違うのが理由。
金メッキの方は全反射を利用した鏡。もう一方のプラチナ+カーボンメッキはブラッグ反射と呼ばれる反射を利用したものらしい。
なにその何という感じの用語なので適当に説明してみると、やっぱり面倒なので次の段落まで読み飛ばそう。
全反射はツルツルな表面を持つものに、浅い角度で光が入ると鏡の湯に反射してしまう現象。これは、風のない日に湖とかプールに行くと、水の遠くの方では景色が反射して写っているのに、手前を見ると水が透けて底が見えるのと同じ。
ブラッグ反射の方は、これが面倒くさいので適当に。X線回析とかそのあたりの用語なのだけど、均一な原子の並び(結晶とか)にX線がやってくると、ある角度ではX線の波が打ち消し合って、反射が全く起こらないのに、別の角度ではその波が強め合って強烈に反射するという現象を利用したもの。
どちらも反射面の裏側の表面は荒く処理してあって、無駄な乱反射を避けるようになっている(
去年紹介した宇宙赤外線望遠鏡IRTSの主鏡以外の部分が意図的に荒く処理してあるのと同じ)。
んでもって、この金メッキとカーボンコーティング+プラチナメッキ、どう使い分けているのかというと、反射しやすいX線の波長が違うそうで、特にカーボンコーティング+プラチナメッキは、これまでは透過力が強すぎて反射鏡を突き抜けてしまっていた、波長の短い硬X線をうまく反射させられるようになったとの事。
このため、ASTRO-Hでは今までは観測が難しかった硬X線を、上手く反射して観測装置に送ることが出来るようになっており、より良い観測結果が期待されている。
このX線望遠鏡の話を聴いていて面白かったのが、普通のカメラがカラー画像を作る時に三原色に対応したCCDを乗せたり、フィルタを掛けることでカラー画像を得るのに対して、X線望遠鏡では一つのCCDでカラー画像を得られるということ。
説明してきたレンズ(反射鏡?)で集められて観測装置に入ると、X線が(観測装置の中で)反射した時に、沢山の光子が発生するらしい。この光子の詳しいスペクトルを観察することで、カラー画像の生成が可能になるのだとか。
何かこう、不思議。
もうちとつ見てきてなんだこれはと思ったのが、マイクロカロリメータ。何じゃそれと思ってパネルを見たら、極低温に保ったセンサにX線がぶつかった時、センサの温度が上がるから、それを観測してX線の(宇宙線としては高エネルギーだけど、一つ一つの粒子としてはごく僅かな)エネルギーを正確に調べて観測を行おうというもの。
理屈は分からんでもないけど、それで何が見えるのかと思ったら、今まで可視光とかではプリズムやらで分光して観測することが出来たドップラー効果をX線でも観測できるようになるらしい。「すざく」でもマイクロカロリメータを搭載していて、こうした観測をする予定だったのだけど、肝心のセンサ冷却用のヘリウムが抜けてしまって観測ができなかったり。ASTRO-Hではこうした部分を改良して観測を目指すとのこと。見えなかったものが見えてくるとまた色々新しい発見があるんだろうな。
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ガンマ線を反射するのは無理 |
さて、ASTRO-HにはX線よりも更に透過力の強いガンマ線の観測装置を積んでいる。ガンマ線は、これはもうアホみたいに透過性が強いので、現在の技術や素材で反射させるのはまず無理。鉛が何メートルあっても足りない。
そこで、どうせ観測機器を透過してしまうのだからと、ASTRO-Hのガンマ線観測機器(軟ガンマ線コンプトンカメラ)は、検出器を何枚も重ねた構造になっている。これで、検出器を透過したガンマ線の位置と時間を調べれば、どの方向からガンマ線がやってきたか分かる仕組みになっている。
こうした仕組みで、今まであんまりちゃんと観測できなかったX線やガンマ線で輝いている天体を詳しく観測できるようになるということなのだけど、ここでふと疑問が。結局X線やガンマ線で観測できる天体って一体何なんだろう?
聞いたら「とにかく高いエネルギーを持っていて、熱くなっている天体」ということらしい。
普段夜空に見える星とかだと数千℃程度。これくらいだと、主に目で見える光、可視光線というのが出てくる。ところがブラックホールとか、銀河の中心とか、あるいは超新星かとか、天体のすごい動きのあるところだと、可視光線よりも、むしろX線やガンマ線のほうが特に強く出てくる。
可視光線が、宇宙の静かな活動を見せてくれるのに対して、X線やガンマ線は宇宙の激しく活動する姿を見ることが出来るのだとか。だから、こうした宇宙の激しい動きやその仕組を知るためにも、短い波長の光、X線やガンマ線での観測が欠かせないのだそうです。
●あかり/LiteBIRD/SPICA
さて、
去年も色々聞いてきて、
冊子まで貰ってきた
赤外線天文衛星「あかり」(
こっちとか
こっちも参照)と、その後継機
SPICA。
今回も色々展示があったので、見てきました。
去年と重複する部分は、前回の色々を見て頂けるといい感じなので、今回は初めて聞いてきた部分とかじんわりと。
直前で出てきたX線天文衛星では
「宇宙の激しく活動する部分が観測できる」わけですが、赤外線は可視光線よりも波長の長い光。
「宇宙の静かな活動が見られる」ということになります。で、普通の望遠鏡では観測するのが難しい静かな天体が見えてくるわけで、それが何かというと小惑星。
惑星よりも冷たく冷えて、普通の望遠鏡では暗くて小さいので観測しにくいけど、赤外線だとそれなりに見えてくる(やっぱり観測には相応の苦労があるようですが)。こうして、いくつもの小惑星を観測することで、そのうち地球に接近するかもしれない、小惑星を探し出すスペースガードにも貢献しているとのこと。
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小惑星を拾ってきてラグランジュ点に置いてみたい |
んでもって、小惑星を赤外線で観測することで温度が分かるのだけど、小惑星も自転する中で、太陽に照らされた部分が温まったり、影になったところが冷えたり。で、その温まり方、冷え方を観測することで、小惑星の大きさやだいたいの成分(性質)がわかってくるのだとか。
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「あかり」主鏡の試作品、SPICAの主鏡はこれよりはるかに巨大 |
毎回展示を見ると貼られている、
あかりの赤外線全天マップ、今回その他に通路側にもう一枚他の全天マップが貼られていたので気になったり。聞いてみるとこれは、宇宙背景放射なのだけど、電波ではなく赤外線で観測されたもの(正確には、「このような画像が観測できるであろうという推測図」かな?)。
WMAP衛星とか、その後のプランク衛星で調べられたマイクロ波宇宙背景放射と、どう違うんだろうと思ってたら、どうやら観測できる「時期」が違うらしい。
宇宙マイクロ波背景放射では「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる宇宙ができてから約40万年後(今から137億年以上前!)の宇宙の状態(物質の密度の差)を見ることが出来るというのだけど、宇宙赤外線背景放射の場合は、基本的にはそれよりもある程度時代が下がって(現在に近づいて)、第一世代の星や、その光で暖められたガスなどが見えているのだとか。こうした赤外線で観測された光は、当時のマイクロ波宇宙背景放射同様当時の宇宙の姿を見せてくれるということなのだけど、実はこの赤外線で観測された光は、何でか理論的に予測された値よりもかなり明るい。
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なんでか理論値の倍くらい明るい |
その原因は今のところサッパリ分からなくて(星で暖められたガスじゃなくて、当時のブラックホールに落ち込んでいくガスが輝いてるんじゃないかとか色々な仮説が出てきているらしい)、また宇宙の新しい姿を見せてくれるのではないかと期待しているのだとか。
またこの遠赤外線宇宙背景放射には別の観測方法を取ることで、マイクロ波宇宙背景放射よりももっと古い時代の宇宙の姿を捉えらえる方法があるようで、その方法を用いれば宇宙誕生後約10^-38秒の原始の世界(10澗分の1秒、一兆分の一秒の、一兆分の一の一兆分の一のさらに十分の一)で、宇宙にどんなふうに重力が働いていたのかを調べられる。
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「あかり」と「LiteBIRS」 |
ここまで来ると(ずっとその手前で)素人には何がなんだか分からなくなってくる始末だが、それでも「何だかすげえ!」ってビックリできるからいいか!(微妙によくない)。
んでもって、ここでの説明で驚いたのが、ビッグバンとインフレーションの順番。
自分は今まで「ビッグバンで宇宙が始まり、その後インフレーションが起こった」と思っていたのだけど、正しくは「宇宙開闢の後に、インフレーションが起こり、そのあとビッグバンが起こった」という形だそうで。「宇宙開闢とビッグバンは別物」というのは目から地味にウロコでありました。
これはネットや書籍のの情報とかよく読んでりゃ分かることなのかもしれないけど、思い込みですっかり間違った順番で覚えてた……
このあたりの宇宙のインフレーションの事を詳しく調べるために打ち上げが計画されているのが
LiteBIRDという小型の衛星で、小回りの効いた専門的な観測を目指しているのだとか。詳しくはサイトのほうで色々と。
赤外線にしろ、マイクロ波にしろ、宇宙背景放射は、ダークマターと呼ばれる「今は観測も説明も上手くできない謎の色々」込みの宇宙の状態(物質の濃度の濃淡)で、「宇宙の晴れ上がり」の瞬間に既に出来ていた宇宙の構造を示しているので、これを詳しく観測することで、今の理論が正しいか、あるいは間違っているか検証できるから、今まで分かっていなかったことが明らかになっていくんじゃないかと。さっきも触れたけど実際赤外線での観測は理論値との大きな差がでているし。
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そんなこんなで、「
その3」に続くのです。